2005年12月24日

Waltari / Blood Sample -2005-

  
PART 1
  01. Helsinki ★
  02. Not Enough ★
  03. Too Much Emptiness ★
  04. Never ★
  05. New York ★
  06. I'm In Pain ★
  07. All Roads Will Lead To Rome ★
  08. Digging Inside

PART 2
  09. Fly Into The Light ★
  10. Shades To Grace ★
  11. Aching Eyes
  12. Back To The Audio ★
  13. Pigeons ★
  14. Exterminator Warheads ★
  15. Darling Boy ★
  16. Wide Awake ★
  17. Julia ★

現在僕が溺愛するフィンランドの変態ノリノリミクスチャーメタルバンドの2005年新作。
数えてみたらこれで10作目、確か活動開始は1986年からだから…えー!もう結構なベテランですなぁ。
そんだけ活動しててもここ日本での知名度たるや未だ「悲惨」としか言いようがない状況で、
この「Blood Sample」も非常に入手に手間取りまして。初めはもう一聴する事すら諦めてたんですが、
何と我らが救世主、HMV様が取り扱いを開始して下さいましてですね!もう喜び勇んで速攻予約。
しかし何か様子がおかしい。メシアHMV様から送られてくるのは「出荷延期のお知らせ」というメールばかり。
そんな非情にも耐えて僕は健気に待ち続け、気が付けば当初の出荷予定日から3週間ですよ。
「ああもうだめだキャンセルしてレコードでも買おうそして死のう」と諦めかけた瞬間に
発送メールが来たのには笑いましたが。待たせやがってクソッタレHMV!愛してるぜ!!

話が反れました。2004年の前作「Rare Species」はゴシック的なアプローチをかけた
いかにも北欧のバンドらしいメロディ重視のアルバムで、完成度自体はやはり高いながらも
Waltari本来の持ち味である変態ごった煮振りがあまり生かされてない作風だったので
個人的に残念に思っていたのですが、今作はもう、一度聴いただけで思わず笑みがこぼれましたね。
パンクありのデスメタルありのラップありのダンスミュージックありのインダストリアルありの…
心の中で「Waltariが帰ってきた!」の叫びとともに勢いよくガッツポーズ!ですよ。
そうそう、やっぱりWaltariはこうでなくちゃ!

さて中身の方ですが、今回は「ヨーロッパの各都市を描いたコンセプトアルバム」ということで
Part1とPart2に分けられた2部構成となっています。合わせて78分の大ボリューム。
まずは彼らの故郷を描いた"Helsinki"、チープなシンセ音から始まり重厚なギターリフに乗せて
フィンランド語を呪文のように呟くあたりはRammsteinを思わせますが、僕の荒みきった心を
紙やすりでこすりあげるような哀愁漂うサビのメロディにはいきなりやられてしまいました。
もうここまでくれば演歌級。彼らの6th「Space Avenue」収録の"Stars"に匹敵する名曲です。
と思えば間奏ではデスヴォイスをかまし、その直後ラップが飛び出してくるあたりやっぱWaltariですね~。
次はシングル曲の"Not Enough"。良い意味で「いかにも売れそうな」ノリノリ系ゴシックという感じ。
実際フィンランドではチャート3位を獲得しているそうです。評判良くないけど僕はかなり好きだなぁ。
その他も拳を突き上げての「ヘイヘイヘイ!」が楽しいパンキッシュな"Too Much Emptiness"、
ファミコンみたいな電子音で始まる疾走曲"Never"、あれ?ヨーロッパじゃなかったっけ?と
思わずにはいられないスラッシュメタル"New York"、ドイツのアウトバーンを表現したという
ツーバスドコドコパンクの"All Roads Will Lead To Rome"など、キャッチーな疾走曲が続く
Part1は僕のお気に入りですね。心臓の鼓動音のようなスローナンバー"Digging Inside"から
若干の無音部を間に挟んでPart2へ。正直この間は邪魔くさいですな。

Part2の幕開けは、ダンサブルなリズムマシーンとヘヴィなギターリフのミスマッチが面白い
"Fly Into The Light"。踊り疲れたらメロディアスなバラード"Shades To Grace"で一休みです。
人をおちょくったようなユーモラスなダンスミュージック"Back To The Audio"の次は
スペインを表したという"Pigeons"。アラビアンな男性ボーカルが印象的な民謡風楽曲です。
このバンド、ギタリストが二人いるのに当然のようにソロが無かったり、新加入したばかりの
ドラマー(Helloween好き)を差し置いて平気で打ち込みを多用するなんてことをやるもんですから
あまりテクニック面で語られることはないんですけど、この"Pigeons"で聴けるアコギ速弾きソロでは
インギーかヌーノ・ベッテンコートかってくらいのテクニックを披露してくれてますよ。
お次は今作で一番激しい(ていうかうるさい/笑)デスメタル"Exterminator Warheads"。
そんな曲でも間にマヌケなボーカルパートを入れずにはいられないWaltariが大好き。
ラスト手前はフランスを表現したという"Wide Awake"。キャッチーかつ壮大で哀愁を帯びた名曲です。
最後はご存知Beatlesのカバー"Julia"。もちろんイギリスの象徴です。この人らは1st「Monk Punk」で
"Help!"をデスメタルにしてしまったという前科があるのですが(笑)今回は割と素直なカバーをやって
しっとりと聴かせます。さすがに原曲通り、アコギ弾き語りだけではないですけど。
(…Beatlesに疎い僕は原曲が思い出せず、1stから順に探しまくったというのは内緒の話)

というわけで今作はWaltariらしい遊び心がふんだんに詰まった素晴らしいアルバムとなった訳ですけど
しかし決して前作「Rare Species」は無駄となったのではなく、このアルバムがあったからこそ今作での
北欧らしい哀愁漂うメロディが生きてきたのではないかと思います。今作のジャケットの隅にこっそり、
「Rare Species」のジャケで登場したカメレオンが姿を見せているというのが何よりの証拠でしょう。
もう12月も終わりですが、個人的05年ベスト登場です。あれ、去年も似たようなパターンだったような…?

名盤:★★★★★ 有名:★★☆☆☆ 聴易:★★★★☆

投稿者 suma : 2005年12月24日 21:34 [ アルバム紹介 ]